職場で30代の女性職員の方が周囲の方々と、御自分の子供に普段から買い与える玩具の話題から、転じて小さい頃に欲しかったモノに付いて話していて、俺も話の輪に加わった。
その方は御自身が5歳位の幼稚園児の当時、「リカちゃんのお部屋」が本当は内心欲しくて、玩具売り場のディスプレイの陳列棚に飾って有ったリカちゃん人形とその関連商品を、親には「見てるだけだよ。」と言い置き遠慮したのだと。
その傍らでは、彼女よりも3歳も年上(年齢一桁の子供の頃では3歳の差はデカい)の兄が、玩具を欲しがりその場で寝込み手足をバタつかせてギャァギャァ泣き喚いていたらしい。
そんな兄さんを横目で見ながら、3歳も年下の妹の彼女は、親をこれ以上困らせまいと自ら遠慮して、自らの素直な本当の気持ちには蓋をして、心の中の本音とは裏腹な言葉を親には申し出た。
こう言ったシーンは日本全国、いや世界中の玩具売り場に共通して見られる親子のやり取りなのだろうが、やはり話で聴くだけでも俺としては胸が締め付けられて、とても切ない気がするのだ。
俺の弟も言っていた。
「玩具売り場で欲しがって欲しがって泣き喚いている子供に対して、その親御さんが『ホラっ!早くしなさい!もう行くわよッ!!』ってシーンに遭遇すると、見ず知らずの他人でもこっちの心も痛むよなぁ(^^;」
職場の女性職員さん達の話で、俺も小さい頃に欲しかった物、入手出来た物とそうでないものなど、古い記憶が甦って来た。
そうする過程では、ウチはそれほど買って貰える様な家庭ではなかったので、苦々しい忌々しい気持ちや追憶と共に甦って来るものも有った。
帰宅して、俺も耳にした事が有る「リカちゃん」に付いて少しネットで調べたり、妻に訊いてみたりした。
すると妻もリカちゃんが欲しくて買って貰ったりした事が有ったのだと。
リカちゃんは1967年に初代が誕生したらしい。
本名は香山リカ(かやま りか)。
英語表記はLiccaとなっていた。
今では他社のブランドとのタイアップ:提携で色々な派生商品が揃っている様だ(上記写真)。
俺は少し、考えた。
こうした子供が欲しがる様な玩具を、子供の頃に潤沢に与えられた子供と、そうでない子供とではその後の人生の展開で、何か著名な差が認められたりするものだろうか・・・??
俺の大学時代の親友のT君は、生まれ育った実家が事業で成功したかなり裕福な家庭の御長男。
子供の頃から、欲しかったモノで手に入らなかった物など何一つ無い様な生活環境であったらしい。
たった一言、お祖母ちゃんに「アレが欲しい。」と言えば、直ぐにその場で購入資金が多めに余分に現金支給。
周囲のお友達が普段のお小遣いやお年玉等を、子供ながらに頑張って貯めに貯めに貯めてやっと買えた様な高価な玩具を、T君は希望したその日に直ぐにでも入手可能な家庭環境であったらしい。
だが、そんな話をゲラゲラ笑いながら俺にするT君は表情をやや曇らせながら、俺にこうも言った。
「だけどある日なぁ、俺はいつもの様にお祖母ちゃんからお金を貰ったんよ。そのお金(お札)をな、俺は陰でビリッと破いたんよ。『こうして子供に簡単に現金を渡すよりも、もっと心のこもったやり方や方法ってもんが有るだろうが・・・!』って言う心の叫びだったんよなぁ、今考えてみればな。」
そんなT君は今、カッチョ良い車を欲しがる。
ただし、自分で働いて得ようと言う気は更々無いらしい。
当て込んでいるのは、相続予定の遺産であるらしい。
それは兎も角として。
俺は今でも良く分からないのだ。
ヒトは欲しい物を全て手に入れれば、絶対に幸せに幸福に成れるのだろうか・・・??
欲しい玩具をより多く手に入れた子供は、そうでない子供よりも恵まれていて幸福であると断言出来るものなのだろうか・・・??
俺が知っているある心理学の実験で、人間に望む物、欲しい物、要求するものを全部与え続けているとその人間はどうなるかと言うものが有った。
結果として、その人間はただひたすら眠りこけて眠り込むだけの人間に成り果てたと言う。
俺が思うに、誰の人生でも欲しいものを我慢する必要に迫られる場面やシーンは、欲求の対象が何であれ必ず存在するものだと俺は思うのだ。
それも生まれた時から死ぬ時までの一生涯の終生である。
生まれた時は、本当は欲しくて呑みたいママのオッパイ。
死ぬ時には、痴呆でボケても傍に居て欲しい温かい家族や肉親の介護や支援。
本当は欲しいけど、手に入れる事は諦めなければならない状況や環境。
何も我慢せずに生きて来た人間は、この世に一人も居ないはずだ。
何もかも揃っている人間と言うのも、この世には存在しない。
そして、欲しくて欲して手に入れた物や物体は、玩具であれ高級車であれ豪邸であれ、時の移ろいと共に必ず劣化し古くなり廃れて、やがて滅び去る。
いや、その前に、人間の側が大抵それに飽きる。
そして興味の対象は次々に移り行く。
だがまた一方で、人間の欲求や欲望が無ければ、経済も社会も発展しないだろう。
結局、頭の悪い俺には、今回のテーマは全く結論が出ましぇん。